OJTとは?目的やメリット・デメリット、実施・設計方法について解説

OJTは企業の人材育成に欠かせない手法の一つですが、効果的に実践するためには綿密な設計と適切な実施方法が求められます。

そのため、以下のような悩みを抱えている人事担当者や管理職の方も多いのではないでしょうか。

・OJTの具体的な進め方がわからない
・指導者の育成方法や指導力の標準化に悩んでいる
・OJTの効果を適切に評価・測定できていない

本記事では、OJTの概要やメリット・デメリットに加え、効果的な設計・実施方法、評価・効果測定の方法について詳しく解説します。

OJTの特性を理解し自社の人材育成の改善につなげられるよう、ぜひ参考にしてみてください。

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企業の人材育成において欠かせないOJTの目的とは?

OJTは、企業の人材育成において欠かせない手法の一つです。近年、ビジネス環境の変化が加速し、組織の競争力強化に向けた戦略的な人材育成が求められています。

OJTは、実践的なスキルやノウハウを効率的に伝授できる点で注目されており、多くの企業で導入が進んでいます。

ここでは、OJTの定義や目的、OFF-JTとの違いについて詳しく解説します。効果的なOJTの実践に向けた理解を深めていきましょう。

OJTとは

OJTとは「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」の略で、職場内で実際の業務を通じて行う教育訓練のことを指します。先輩社員が後輩社員に業務の中で指導し、実践的なスキルやノウハウを伝授するのが特徴です。

日本では1970年代以降、企業の人材育成手法として広く普及し、現在では多くの組織で中核的な役割を担っています。

OJTは、座学では習得が難しい暗黙知の伝承にも効果的で、業務に直結した実践的な学びの機会となります。

OFF-JTとの違い

OFF-JTは職場を離れた場所で行う教育訓練で、セミナーや研修など、座学中心の学習形態が一般的です。体系的な知識の習得に適しており、社員の視野を広げるのに役立ちます。

一方、OJTは実際の業務の中で行われ、実践的なスキルの習得に重点を置いています。仕事の進め方や顧客対応など、現場で必要となる能力の向上に直結します。

OFF-JTとOJTは互いに補完し合う関係にあり、両者をバランス良く組み合わせることで効果的な人材育成につながるでしょう。

OJTの目的

OJTには、以下の3つの主要な目的があります。

  • 実務能力の向上
  • 組織文化・ノウハウの伝承
  • 個人の育成とモチベーション向上

OJTでは、社員が実際の業務を通じて実践的なスキルを習得することができます。マニュアルだけでは伝えきれない暗黙知や業務の進め方を現場で学ぶことで、社員の実務能力が飛躍的に向上し、即戦力として活躍できるようになるでしょう。

また、OJTは組織独自の文化やノウハウを継承する上でも重要な役割を果たします。先輩社員から後輩社員へと直接指導することで、組織の価値観や業務のコツが受け継がれ、世代を超えた一体感が醸成されます。

さらに、OJTを通じて、社員一人ひとりが着実に成長できる環境が整います。上司や先輩との信頼関係が深まることで社員の仕事へのモチベーションや責任感が向上し、個人の成長が組織全体の活力につながるでしょう。

OJTのメリット・デメリット

OJTを効果的に実践するためには、そのメリットを最大限に活かしつつ、デメリットを認識し、適切に対処することが求められます。

ここでは、OJTのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。企業の教育担当者や管理職の方はOJTの特性を理解し、自社の人材育成の改善につなげましょう。

OJTのメリット

  • 業務を通じた即戦力の育成
  • コスト面での効率性
  • 暗黙知を含む組織文化・技能の伝承

OJTの最大のメリットは、実際の業務を通じて実践的なスキルを身につけられる点です。これにより、即戦力となる人材を効率的に育成することができます。

また、社外研修などと比べOJTは社内のリソースを活用するため、コスト面でのメリットもあります。

加えて、OJTではマニュアル化が難しい暗黙知も、先輩社員から後輩社員へ直接伝えることができ、組織特有の文化や技能を効果的に継承していくことが可能となります。

OJTのデメリット

  • 指導者スキル・モチベーションのばらつき
  • 業務と指導の両立の難しさ
  • 企業全体の教育方針が不十分だと失敗リスクが高い

OJTのデメリットとしては、指導者の教育スキルやモチベーションにばらつきがあると研修の質に差が生じてしまう点が挙げられます。

また、指導者が業務と教育の両立を求められるため負担が大きくなりがちで、指導者のワークロードが過度に高まるとOJTの質の低下や指導者の離職リスクにつながる恐れがあります。

さらに、OJTを効果的に実施するには企業全体での教育方針の統一が欠かせませんが、体系的な教育プログラムや指導者の育成が不十分だと、OJTが期待通りの成果を上げられない可能性があるため注意が必要です。

効果的なOJTの設計・実施方法

OJTを効果的に実践するためには、綿密な設計と適切な実施方法が欠かせません。ここでは4つのポイントを踏まえて、効果的なOJTの設計・実施方法について解説します。

これらの要素を適切に組み合わせることで、OJTの効果を最大限に引き出し、社員の能力開発と組織力の強化につなげることができるでしょう。

指導計画を策定する

OJTを効果的に実施するためには、まず明確な指導計画を策定することが重要です。指導計画では対象となる社員のスキルレベルや目標に応じて、指導内容や期間、評価基準などを具体的に定めましょう。

また、業務の進捗状況や社員の習得度に合わせて柔軟に計画を修正していく必要があります。指導計画を適切に策定し実行することで、体系的かつ効率的なOJTを実現できます。

指導力の標準化に向けて指導者を育成する

OJTの効果は、指導者の指導力に大きく左右されます。そのため、指導者の育成に力を入れ、指導力の標準化を図ることが重要です。

指導者研修の実施や指導ノウハウの共有、ベストプラクティスの横展開などを通じて、指導者のスキルアップを図りましょう。

また、指導者の評価・フィードバックを行い、継続的な改善を促すことも欠かせません。指導者の育成に注力することで、OJTの質の向上と指導力の底上げを実現できるでしょう。

PDCAサイクルを活用する

OJTの効果を持続的に高めていくためには、PDCAサイクルを活用することが有効です。

  • Plan(計画):指導計画の策定や目標設定を行う
  • Do(実行):計画に沿ってOJTを実施し指導と業務を並行して進める
  • Check(評価):社員の習得度や業務の進捗状況を確認し課題を明らかにする
  • Act(改善):評価結果を踏まえて指導方法や計画を見直し次のサイクルに反映させる

PDCAサイクルを回すことで、OJTの継続的な改善と高度化を図ることができるでしょう。

フォローアップを実施する

OJTの効果を確実なものとするためには、指導終了後のフォローアップが欠かせません。

フォローアップでは、社員の業務遂行状況や課題を確認し、必要に応じて追加の指導や支援を行います。また、社員の自律的な成長を促すために、自己評価やキャリア面談なども活用することが大切です。

フォローアップを通じて社員のモチベーションを維持し、学びの定着を図ることができます。さらに、フォローアップの結果を次のOJTに活かすことで、指導の質の向上にもつなげることができるでしょう。

OJTの評価・効果測定の方法

OJTの効果を最大限に引き出すためには、適切な評価と効果測定が欠かせません。

ここでは、定量評価と定性評価の実施、モチベーション・満足度の測定、投資対効果(ROI)の確認という3つの方法を通じて、OJTの評価・効果測定について解説します。

これらの方法を組み合わせることで、OJTの成果を多角的に把握し、改善につなげることができるでしょう。

定量評価と定性評価を実施する

OJTの評価には、定量評価と定性評価の両方を取り入れることが重要です。定量評価では、業務の生産性や品質、スキルの習得度などを数値化し、目標に対する達成度を明確に把握します。

一方、定性評価では、社員の行動変容や態度、コミュニケーション能力などを観察し、質的な面での成長を捉えます。

定量評価と定性評価を組み合わせることでOJTの効果を多面的に評価し、社員の成長を適切に把握することができるでしょう。

モチベーション・満足度を測定する

OJTの効果を測定する上で、社員のモチベーションや満足度を把握することも重要です。アンケートやインタビューを通じて、社員がOJTに対してどのように感じているかを確認します。

指導内容や方法に対する満足度、仕事へのモチベーションの変化、自己効力感の向上などを測定することで、OJTが社員のエンゲージメントに与える影響を評価できます。

また、測定結果を踏まえて指導方法を改善することで社員の満足度とモチベーションを高め、OJTの効果をさらに引き上げることができるでしょう。

投資対効果(ROI)を確認する

OJTには時間と労力、コストが投じられるため、その投資対効果(ROI)を確認することが欠かせません。ROIを算出するためには、OJTによって得られた成果(生産性の向上、品質の改善、社員の定着率アップなど)を金銭的価値に換算し、投資額と比較します。

ROIを定期的に確認することでOJTの費用対効果を明らかにし、経営層の理解と支援を得ることができます。

また、ROIの分析を通じて、OJTの改善点を明確にし、より効率的で効果的な人材育成につなげることができるでしょう。

成果を高めるOJT研修のポイントを知りたい方へ

本記事では、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)について解説しました。

最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。

  • OJTとは、実際の業務を通じて行う教育訓練のこと。
  • 実践的なスキルやノウハウの効率的な伝授、実務能力の向上などが目的。
  • 座学中心のOFF-JTとは異なり、実践的スキル習得に重点が置かれる。
  • 即戦力の育成やコスト効率の良さ、組織文化・技能の伝承などのメリットがある。
  • 一方で、指導者のスキルにばらつきがあったり、業務と指導の両立が難しい面もある。

OJTを効果的に実施するためには、明確な指導計画の策定や指導者の育成、PDCAサイクルの活用などが重要です。適切に設計・実施することで、社員の能力開発と組織力の強化に大きく貢献できるでしょう。

当メディアでは、成果を高めるためのOJTリーダー研修についても詳しく解説しています。企業におけるOJT研修の効果を高めたい方はぜひご覧ください

OJT研修|成果を高めるためのOJTリーダー研修の必要性

この記事を書いた人

研修メディア監修者・廣瀬哲人

当メディアの監修者:廣瀬哲人
株式会社ENロジカルの代表取締役として、企業研修・Eラーニングの開発や提供を行っています。京都大学在学中に、脳科学についての研究を行っており、現在ではAI(人工知能)技術のビジネス活用など、デジタル技術に精通した専門家として、ChatGPTなど生成AIの活用やDX人材の育成に関する企業研修・セミナー・講演講師を務めております。
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