MBO(目標管理制度)とは?実施プロセスや実施上の注意点など網羅的に解説

企業において、社員のマネジメント手法の1つとして取り入れられているのがMBO(目標管理制度)です。MBOは、上司と部下のコミュニケーションを活性化させ、社員のモチベーションを高め、主体性高く働いていけるなど、様々なメリットがあります。

その一方で導入にはデメリットや難しさも存在しているため、しっかりと検討の上で実施することが重要です。
この記事では、MBOの正しい意味や目的から、実施プロセス、メリットデメリットなど網羅的に解説していきます。

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MBO(目標管理制度)とは?

MBO(Management by Objectives)とは、組織と個人の目標を一致させる目標管理手法です。1960年代にアメリカの経営学者ピーター・ドラッカーが提唱しました。

MBOの特徴は、個々の社員が自らの目標を設定し、その目標達成に向けて行動計画を立てて取り組むことです。部下が上司と十分なコミュニケーションを取り、会社の方針と自身のキャリア目標を照らし合わせながら、自律的に目標を設定していきます。

目標管理自体は従来から行われていましたが、MBOでは個人目標の設定と達成が重視されます。社員一人ひとりが自らの目標達成にコミットすることで、主体性が引き出され、仕事へのモチベーションも高まります。

日本では1990年代以降に注目され始め、成果主義の導入とともに各社で取り入れられるようになりました。自律性を重視する手法として、今もなお有効性が高いとされています。

MBO(目標管理制度)の目的

MBOを導入する主な目的は、組織全体と個人の目標を一致させることです。

組織としての業績目標がある一方で、個々の社員には自らの仕事に対する目的意識や達成感が必要です。MBOでは社員が自律的に目標設定と達成に取り組むため、会社の目標と個人の目標をうまく一致させることができます。

その結果、社員一人ひとりの業務効率が向上し、仕事に対するモチベーションも高まります。目標達成のために必要な能力開発に自発的に取り組むようにもなり、個人の成長も促進される効果があります。

また、目標設定と達成のプロセスを通じて、組織の方針や理念が社員に浸透しやすくなるというメリットもあります。

このようにMBOは、組織と個人のWin-Winの関係を実現する目的で導入される重要なマネジメント手法といえます。

MBO(目標管理制度)の実施プロセス

MBOを実践するための具体的なプロセスは以下のようになります。

1.組織目標の設定

経営陣が企業のビジョンや中長期計画に基づき、組織として達成すべき目標を設定します。

2.個人目標の設定

上司と部下が面談を行い、組織目標を踏まえて個人目標を設定します。

3.行動計画の作成

目標達成のために必要な行動計画を立てます。具体的な行動内容とスケジュールを定めます。

4.進捗管理

上司と部下が定期的に面談を行い、目標達成に向けた進捗状況を確認します。

5.評価・改善

期末に目標達成度を評価し、次期の目標設定に反映させるための改善を行います。

このPDCAサイクルを回すことで、MBOを継続的にブラッシュアップすることができます。

MBO(目標管理制度)実施上の注意点

MBOを実施する際の注意点は以下の点が挙げられます。

・目標設定の際には、具体的で適正な難易度とする

目標が抽象的だと行動計画が立てにくいため、できるだけ具体的な目標とすることが重要です。また、目標のハードルは高すぎても低すぎてもいけないため難しいところです。部下の能力と可能性を見極めて設定する必要があります。

・上司と部下のコミュニケーションを十分に取る

目標設定と評価の際には、上司と部下が綿密にコミュニケーションを取ることが重要です。お互いの考えをすり合わせることで、納得のいく目標管理が可能となります。

・評価の透明性と客観性を確保する

評価基準を明確にし、評価結果の根拠を丁寧に説明することで、部下の納得感を高めることが重要です。評価基準が曖昧では、達成時の自己効力感を感じづらかったり、未達の場合はモチベーションの低下に繋がりMBOを実施する意味がありません。MBOを実施する際は、明確な評価基準をセットで考えていきましょう。

・MBOの形式化を避け、建設的なフィードバックを行う

事務的な手続きで終わらせるのではなく、部下の成長につながる前向きなフィードバックを心がけることが重要です。MBOは目標を管理するものではなく、上司と部下が建設的なコミュニケーションを取る為の手段です。手段の目的化にならないように定期的に振り返ることが大切といえるでしょう。

MBO(目標管理制度)のメリット

MBO(目標管理制度)のメリットを整理します。MBOを活用することで、個人の成長だけでなく、組織力の強化にも繋がるでしょう。

・個人と組織の目標を一致させることができる

社員が自律的に目標設定に参画するため、個人と組織の方向性を整合させることができます。

・社員のモチベーション向上が図れる

自ら設定した目標の達成に向けて主体的に取り組むため、仕事への意欲が高まります。

・自律性と自己管理能力が向上する

目標達成のために自ら行動計画を立て実行することで、自律性と自己管理力が養われます。

・個人の成長が促進される

目標達成に必要なスキル習得に取り組むことで、個人の成長を後押しします。

・組織の生産性と業績が向上する

個人の目標達成が組織の業績向上につながるため、全体として生産性が高まります。

個人と組織の双方にメリットがあることが、MBOの大きな特長です。

MBO(目標管理制度)のデメリット

MBO(目標管理制度)を導入する前に、デメリットについても理解し、それをカバーする方法についても同時に考えることが重要です。

・目標設定が難しく、形骸化しがち

組織目標と個人目標のすり合わせが難しい場合があり、単なるノルマ設定になりがちです。

・評価・フィードバックが難しい

評価基準が曖昧だと、公正な評価ができないことがあります。建設的なフィードバックも難しくなります。

・目標達成に集中しすぎる可能性がある

目標達成自体が自己目的化してしまい、手段が目的化するリスクがあります。特に数値目標を設定している場合、数字のみを追いかけすぎてその他の指標がおろそかになったり、会社の行動指針から外れた行動を取ってしまうということが起こるかもしれません。

・運用の手間とコストがかかる

継続的な面談と目標管理の運用には、人件費などのコストがかかります。

・部下のやる気を削ぐ可能性

ハードルが高すぎる目標を押しつけると、部下の意欲が低下する場合があります。高い目標を明確な根拠なく決定し、それが未達であることに対して𠮟責するなどしていると、部下のモチベーションは下がり、離職という意思決定をすることになるかもしれません。

上記のように、MBOの効果を上げるには、適切な運用が欠かせません。リスクを認識し、形骸化を避ける必要があります。

MBO(目標管理制度)と職務等級の関係を理解する

MBOでは、設定する目標の内容は職務等級によって異なる傾向があります。社員の職務等級を理解して各階層に適切な目標設定をしていくことが重要です。職務等級が高い管理職ほど、組織のビジョンや戦略に関わる抽象度の高い目標が設定されることが多いです。

他方、一般職や初級管理職など、職務等級が低い場合は、自身の業務遂行に関する具体的な目標が設定されることが多いです。これは、企業の方針立案や戦略実行といった役割が職務等級とともに拡大するためです。

ただし、職務等級が高くても、自部門やチームの業務目標とリンクした具体的な目標を設定することが望ましいとされています。逆に、一般職でも自身の仕事が組織目標にどう関係するかを考えることが大切です。

以上のことから、MBOにおいては職務等級を理解した上で、抽象度と具体度を適切に組み合わせた目標設定を心がけることが、MBOの効果を最大化する上で重要だと言えます。

MBOにおける上司と部下のコミュニケーション

MBOでは、上司と部下が頻繁にコミュニケーションを取ることが重要視されています。大きくはMBOの各プロセスにおいて、以下のポイントを踏まえてコミュニケーションを取ることが重要です。

①目標設定時

上司が組織目標を伝達し、部下が自身の強み・弱みを踏まえた目標設定をするためのコミュニケーションが必要になります。

②進捗管理時

上司が部下の目標達成状況を把握し、必要な支援を提供するためのコミュニケーションが必要です。

③評価時

上司が部下の目標達成度を適正に評価し、部下が納得できるようなフィードバックを行うためのコミュニケーションが必要です。

MBOの各プロセスにおいて、上司と部下が定期的なコミュニケーションを取ることで、目標に対して適切なアプローチを取りやすくなり、結果として目標達成にも繋がります。

またMBOにより上司と部下のコミュニケーションが活発になり、良好な関係構築に繋がります。これこそがMBOの本質的な目的といえるでしょう。

MBO(目標管理制度)の導入効果の測定手法

MBOの導入効果を測定する方法としては、主に以下のような手法があります。

・生産性や業績の変化からの測定

MBOの導入前後で売上や利益、生産量やサービス水準など、業績指標の変化から効果を測定する方法です。データの収集が容易ではありませんが、定量的に施策を評価することができるでしょう。

・社員アンケートの実施

MBOの導入による意識変化や満足度をアンケート調査することで、定性的な効果を測定できます。MBOの導入前後など、比較的短期間でデータを集めることが可能です。

・離職率の変化からの測定

MBOの導入により離職率が低下したかを調査することで、定着力の向上を測定できます。数年ごとの比較など、ある程度の期間を要します。

・目標達成度と業績変化の相関分析

目標達成と業績の相関関係を分析することで、MBOが業績向上に与えた影響を定量的に測定できます。精度の高い分析にはノウハウがいりますが、定量的な評価が可能です。

これらの手法を組み合わせ、定量と定性の両面からMBOの導入効果を測定することが重要です。

まとめ

MBO(目標管理制度)について解説しました。MBOは人事評価のためのものと誤解されがちですが、本質的な目的としては企業内のコミュニケーションを活性化させ、社員がよりモチベーション高く働けるようにするための仕組みです。

MBOを導入し実施することが目的となってしまい、進捗管理に多大な工数負担が掛かったり、目標が厳しすぎてモチベーションを損なったり、MBOが𠮟責の種になってしまうと本末転倒です。

あくまでも社員一人ひとりの働きがいに繋げるための手段として、MBOの導入を検討していきましょう。

この記事を書いた人

研修メディア監修者・廣瀬哲人

当メディアの監修者:廣瀬哲人
株式会社ENロジカルの代表取締役として、企業研修・Eラーニングの開発や提供を行っています。京都大学在学中に、脳科学についての研究を行っており、現在ではAI(人工知能)技術のビジネス活用など、デジタル技術に精通した専門家として、ChatGPTなど生成AIの活用やDX人材の育成に関する企業研修・セミナー・講演講師を務めております。
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