グローバル化とテクノロジーの進化によって、社会環境や消費者ニーズは刻々と変化しています。この激しい変化に対応し、競争優位を確立していくには、DXによる企業変革は欠かせません。DXの本質を理解し、組織のあらゆる領域で変革を推進することが、これからの時代を生き残る企業には強く求められているのです。
この記事では、DXの概要から最新のトレンド、自社のDXを進めるためのポイントについて網羅的に解説していきます。
人事-研修担当者300名へのアンケート調査
DXとは?
DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革を意味します。TransformationのTransは交差するという意味があるため、交差を1文字で表す「X」を用いて「DX」と略されています。
DXは、ITの活用で業務プロセスや顧客接点を改善するとともに、データの収集と分析に基づく意思決定を可能にし、効率化とイノベーションを推進する取り組みです。DXは企業の存続と競争力強化に欠かせない要素となっています。
「DX」と「IT化」の違い
「DX」と「IT化」は似た概念に見えますが、目的と範囲に大きな違いがあります。
IT化は、業務の効率化やコスト削減を目的に、既存の業務プロセスをデジタルツールやシステムを使って自動化・最適化することです。たとえば、紙の書類を電子化したり、手作業で行っていた業務をソフトウェアに置き換えることが該当します。
一方、DXは、単なるIT化を超えた概念で、デジタル技術を活用して企業のビジネスモデルや組織全体を根本的に変革することを指します。新しい価値を創造し、競争優位を確立することが目的です。たとえば、AIやIoTを活用して新たなサービスを提供することで、顧客体験を革新することなどが挙げられます。
要するに、IT化は部分的な改善、DXは全体的な変革を目指すものです。
▶IT化とデジタル化の違いとは?DX推進のために理解を深める
最新のDXトレンド(DX白書2023より)
最新のDX白書によると、DX投資の重点分野はCRM、ECサイト、ビッグデータ、RPA、テレワーク環境などとなっています。クラウド活用が進み、デジタル人材育成も課題となっています。DX先進企業の共通点は、CX(顧客体験)向上とデータ活用にあるといえます。
【参考】 独立行政法人情報処理推進機構|DX白書2023 エグゼクティブサマリー
企業のDX取組の状況
総務省の調査によると、大企業では40%以上がDXに取組んでいるのに対し、中小企業では10%程度にとどまっているとのことでした。
売上規模が大きくなるほどDXに取組んでいる企業の割合も高くなる傾向が確認されており、企業のDX化にはコストもかかることから、投資余力のある企業でないとDX化が進みづらいという課題が見えてきています。
また、地域別にもDX推進には差があり、東京23区に本社がある企業の約40%がDXに取り組んでいる一方、政令指定都市、中核市、その他市町村と規模が小さくなるにつれ、割合が低くなる結果でした。地方においてはまだDXが進んでおらず、東京都心との競争力の差が広がることも懸念されているかもしれません。
ヒューマンアカデミーが人事・研修担当者300名に実施したアンケート調査でも、企業のIT・DXの必要性を感じながらも研修が実施できていない企業は60%にものぼる結果となりました。
【アンケート調査を一部抜粋】
Q.あなたの会社の、IT・DX研修への取組み状況は?
【画像引用】 https://biz.athuman.com/news/detail/125.php
- ( 9% )IT・DX研修が充実している
- (17%)IT・DX研修をしているもののまだ不十分
- (60%)IT・DX研修はしていないが、必要性は感じている
- (14%)ID・DX研修はしておらず、必要性も感じない
「DX研修の必要性は感じているけれど、どのように実施すればよいのかわからない」「自社に必要なDX研修がわからない」など、DX研修に関してお悩みを持つご担当者様は、ぜひ一度ヒューマンアカデミーまでご相談ください。
X推進人材やエンジニア向け研修だけではなく、一般社員のリテラシー向上のための研修も多数用意しており、DX推進やリスキリングによるITリテラシーの向上を効率的に行える研修をご提案させていただきます。
DX化に向けたITシステムへの移行
DX化に向けたITシステムへの移行については、既存システムのクラウド化やセキュリティ強化などのインフラ面での進化に加え、RPAやAIなどの最新技術を業務に取り入れることが重要です。
レガシーシステムの改修にはコストと時間がかかるため、クラウドベースのシステムへの移行を戦略的に進めることが望まれます。クラウド上で機能するソフトウェアを最大限に活用することで、業務効率化とコスト削減を実現できます。セキュリティ対策も万全のうえで、テレワーク環境の整備や労働スタイルの柔軟化につなげるIT投資がDXの実現には欠かせません。
DX人材不足への対応
DX人材不足への対応については、社内教育の充実と中途採用の拡大が有効です。DXを推進するための部署を新設し、専門知識を持つ管理職を配置することも重要になります。
また、ITベンダーとの連携を深め、DX人材の紹介やOJTなどを通じた支援を仰ぐのも対策のひとつとなるでしょう。大企業であれば、ITコンサルタントの活用でDX戦略立案をサポートを検討するとともに、社員のデジタルスキルをブラッシュアップしていくことが重要です。DX人材の獲得競争が激しい中、内部教育と外部連携を組み合わせた取り組みがカギとなります。また、DXを社内で推進するためには、DX専門人材がいるだけでなく、全社的にDXへの理解を深め、社を上げてDX化を進めていく覚悟を示すことも大切です。
DX人材の重要性や育成について解説した記事もございますので、理解を深めるのにお役立てください。
▶DX人材育成の成功ポイントは?育成ステップやプログラム例を解説
社内DXを進めるためのポイント
社内DXを進めるには、まず経営陣がDXの重要性を認識し、その推進を明確に位置付けることが欠かせません。DX推進役の任命や、IT部門と業務部門の連携を図るDX推進体制を整備することも重要なポイントです。
DXの取り組みについて社内に継続的に情報発信し、社員の理解と協力を得られるよう働きかける必要があります。個々の業務プロセスのデジタル化に向けた方針を策定し、段階的に改善を進めることが望まれます。DXは時間がかかる取り組みですが、小さな成功体験を積み重ねながら、組織としてのデジタル化を着実に推進していくことが重要だと言えます。
企業におけるDX化の推進については、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
企業で実施できるDXの例
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、競争力の維持や向上を目指す企業にとって欠かせない取り組みです。DXには顧客体験の改善、業務プロセスの効率化、新サービスの開発、そして組織文化や働き方の見直しが含まれます。
ここでは、これらの具体的な取り組みについて詳しく説明します。
顧客体験の革新
デジタル技術を駆使し、顧客データを分析することで個別最適化されたサービスを提供できます。モバイルアプリやウェブツールを用いることで、顧客が簡単にアクセスできる環境を整備することが大切です。
これにより、満足度の向上とブランドロイヤルティの強化が期待できます。顧客との接点を増やし、より多様な体験を提供することが重要です。
業務プロセスの最適化
人工知能や自動化技術を活用することで、需要予測や在庫管理、反復的な業務を効率化できます。
これによりコストを削減し、生産性を向上させることが可能です。従業員はより付加価値の高い業務に集中でき、企業全体の効率性が向上します。
プロセスの最適化は、市場の変化に柔軟に対応するためにも重要です。
新たなサービスの創出
IoT技術を活用し製品の稼働状況を遠隔監視することで、予防保守サービスを提供できます。このサービスは顧客に新たな付加価値を提供し、企業の収益源を拡大する可能性を秘めています。
また、既存サービスの改善や全く新しいサービスの創出を通じて、競争優位性をさらに高めることができるでしょう。
組織文化と働き方の変革
クラウドツールを導入し、リモートワークや柔軟な働き方を推進することで、多様性を受け入れる組織文化を構築できます。データ分析スキルの教育を従業員に行い、データを基にした意思決定を促進することが重要です。
さらに、従業員主導のイノベーションを奨励することで、全社的な変革を実現できます。
このような取り組みが、企業の柔軟性と競争力を向上させる鍵となるでしょう。
DXに活用できる補助金について
企業のDXを進めるには、クラウドサービスやIT設備、人材育成などへの投資が必要となります。比較的、投資余力の大きい大企業であれば問題ない場合がありますが、中小企業などではDXを進めるためのコスト捻出が難しいケースもあるでしょう。
そこで、企業のDX推進やDX人材育成のために活用できる助成金があります。自社の課題と照らし合わせて、活用できそうな助成金があれば、検討してみてもよいでしょう。
まとめ
DXの本格的な時代が到来し、全産業でDX化が進んでいます。しかしながら、企業規模や地域によってDX化の進捗には大きな差がある状態です。日本という国の視点でグローバルな競争力を考えると、国内のDX推進は課題であるといえるでしょう。
DXを推進するには、経営戦略とIT戦略の一体化が欠かせません。クラウドとデジタル技術を最大限に活用し、データ活用型の業務改革を進めることが重要です。DX人材の採用・育成、社内体制の整備、継続的なIT投資がDX実現の鍵を握ります。DXの意義を理解し、全社を挙げてDXに取り組むことが求められています。
ヒューマンアカデミーでは、企業のDX人材を育成するためのDX研修サービスを提供しています。貴社の課題に応じてカリキュラムのカスタマイズが可能ですので、ぜひお問い合わせください。