企業において昨今求められているDX推進。経済産業省「2025年の壁」を提唱するなどいち早い推進が求められるなかで、企業のDX推進状況が気になる担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ヒューマンアカデミーが人事・研修担当者300名に対して行った自社のIT・DXに関する取り組み状況や課題、IT・DX研修の実施状況などのアンケート調査の結果を交えてDX推進について解説します。
DX推進にお悩みを持つ担当者の方は、ぜひご参考にしてください。
人事-研修担当者300名へのアンケート調査
【調査概要】
- 調査方法:アンケート
- 調査機関:2024年7月25⽇〜7月30⽇の計6⽇間
- 対象地域:全国
- 調査対象者:⺠間企業に勤める⼈事・研修担当者※メーカー・製造、サービス・インフラ、IT・ソフトウェア・情報処理など
- 回収件数:300名
- 調査協力:株式会社マーケティング・コミュニケーションズ
DX推進とは
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、デジタル技術を活用して企業や組織の業務プロセス、ビジネスモデル、組織文化などを根本的に変革すること自体を指します。これは単なる技術導入に留まらず、事業全体の進化や新たな価値創造を目指す考え方・概念です。
「DX推進」は、そのDXを実現するための具体的な取り組みやプロジェクト、戦略の実行プロセスです。つまり、DXの理念を具体的なアクションプランに落とし込み、組織全体で実施していく活動を意味します。具体的には、技術の導入、組織改革、業務プロセスの見直し、従業員のスキルアップなど、DXを実現するためのステップや施策全般が含まれます。
経済産業省によるDXの定義
経済産業省は、DXを以下のように定義しています。
引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード 実践の手引き(要約版)」
- デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと。
- また、そのためにビジネスモデルや企業文化等の変革に取り組むことが重要となる。
価値の創出まで考えず「DX」自体が目的になってしまったり、DXを実現する仕組みが伴っていなかったりする状態では、DXはなかなか進まないでしょう。
「2025年の崖」とは?
「2025年の崖」とは経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で提唱した言葉で、企業が今まで使い続けてきた古いシステム、いわゆるレガシーシステムに頼りすぎることで急速に進むデジタル技術の波に乗り遅れてしまうリスクを指します。
多くの日本企業は20年以上前に導入されたシステムを現役で使っていますが、これらは最新の技術との連携が難しいうえに修理や保守にかかる費用がかさむため、企業の競争力の低下につながります。また、こうした古いシステムの維持に熟練技術者が多く関わるため最新のデジタル技術を扱える人材の育成や採用が進みにくくなり、組織全体の変革が遅れる状況に陥ることもあるでしょう。
このような状況が進行すると国際市場での競争に大きなダメージを与えるほか年間で数兆円もの経済損失に繋がる恐れがあるため、早急なデジタル化と組織改革が求められているのです。
DX推進の現状
経済産業省では、DX推進の成熟度を以下の6段階で評価しています。

ヒューマンアカデミーで人事・研修担当者300名に対して行ったアンケート調査によると、97%の企業が何かしらのDXに着手しているものの、そのレベルはまだ発展途上であることがわかりました。

割合が最も高いのは『レベル3:全社戦略に基づく部門横断的推進』と、部門横断での推進を実施できている企業が多いことがわかります。
一方で、『レベル1:一部での散発的実施』や『レベル2:一部での戦略的実施』の企業の一部での実施にとどまっている企業は計47%と、半数近くを占めています。
ほとんどの企業でDX推進が行われているものの、そのレベルにばらつきがあるのが現状です。
DX推進における課題
DX推進のレベルが企業によってばらつきがある背景として、様々な課題があることが挙げられます。
ヒューマンアカデミーで人事・研修担当者300名に対して行ったアンケート調査によると、DX推進の一番大きな阻害要因は「DX推進人材不⾜」であることがわかりました。

その他にも人材不足・育成に関する課題が上位を占めており、現在DXを推進する人材・将来DXを担う人材のどちらの側面にも課題があるようです。

DX推進に向けて、IT・DXを担当する部署や専属の担当者を設置している企業は4割を上回っています。
一方で、IT・DXを担当する部署がない、部署・担当者が兼任になっている企業も多いのが現状です。
上記の結果からも、人材不足・育成が課題となっている企業が多いことが伺えます。
DX推進の取組
ヒューマンアカデミーで人事・研修担当者300名に対して行ったアンケート調査によると、IT・DX推進に関して取り組んでいるものとして「業務プロセス効率化」が多く挙げられました。

「文章の電子化・ペーパーレス化」「会議や打合せなどのオンライン化」「テレワークの実施」などは日々の業務の効率化に直結することから、実施率が高いといえるでしょう。
また、今後取り組む必要があるものとして「デジタル人材の採用・育成」が実施率を上回る結果となりました。
「デジタル人材の採用・育成」はDX推進における課題でありつつ、ツールの導入などだけでは対応が難しいこともあり今後取り組みたい企業が多い傾向があると考えられます。
DX推進の必要な支援策
ヒューマンアカデミーで人事・研修担当者300名に対して行ったアンケート調査によると、IT・DX推進により期待する効果として労働環境改善に関する回答が多く挙げられました。

働き方改革やワークライフバランスの推進が推奨される現代において、「業務の効率化」や「労働時間の短縮」、「在宅勤務やリモートワークなど多様なワークスタイル」が重視されている傾向があると言えるでしょう。
また、「コスト削減」も半数以上の回答が寄せられるなど、注視されていることがわかります。
まとめ
本記事では、企業のDX推進状況とその課題について解説しました。最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 97%の企業がDXに着手しているが、進捗度にばらつきがある
- 組織改革と人材育成がDX推進の鍵となっている
- 「2025年の崖」によるリスクが企業の競争力に影響を与える
- 業務プロセスの効率化やペーパーレス化に向けたDX推進の実施率が高くなっている
- 労働環境改善やコスト削減がDX推進の主な期待効果となっている
DX推進は技術導入だけでなく、組織全体の変革と人材育成が必要不可欠です。自社のDX推進戦略を見直し、未来に向けて積極的な取り組みを進めていきましょう。
ヒューマンアカデミーでは、企業のDX人材を育成するためのDX研修サービスを提供しています。貴社の課題に応じてカリキュラムのカスタマイズが可能ですので、ぜひお問い合わせください。