レジリエンスとは、逆境やストレスに直面した際に、それらを乗り越えて適応し成長する力のことを指します。
現代社会では、不確実性や複雑性が高まりメンタルヘルスの重要性も認識されるようになったことから、個人と組織の両面でレジリエンスが注目を集めています。
そのような中で、以下のような疑問や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
・レジリエンスの定義や背景について詳しく知りたい
・レジリエンスが低いと個人や組織にどのような影響があるのか気になる
・自分や部下のレジリエンスを高める具体的な方法を知りたい
本記事では、レジリエンスの概念を明確にした上で、それが低い状態が個人と組織に及ぼす影響について解説します。
さらに、心理学の知見を活用した個人のレジリエンス向上策と、組織風土や人材育成の観点から組織のレジリエンスを高める方法を具体的に紹介します。
レジリエンスを高めることで、ストレスに負けない強い心と、変化に適応し成長を続ける組織づくりにつなげましょう。
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レジリエンスとは?定義と背景
レジリエンスという言葉は、ラテン語の「resilire(跳ね返る)」が語源とされ、心理学や経営学、防災分野など幅広い領域で使用されています。
個人や組織が困難な状況に直面した際に、それを乗り越えて適応していく力を表す概念として注目を集めています。
ここでは、レジリエンスの定義を明確にするとともに、現代社会において重要視される背景について解説します。
レジリエンスの一般的な定義
レジリエンスとは、ストレスや逆境に直面した際にそれらを乗り越えて適応し、元の状態に回復したり、さらなる成長を遂げたりする力を指します。
心理学の分野では、トラウマからの立ち直りやストレス耐性の高さを表す概念として用いられます。また、組織論においては、変化に適応し危機を乗り越えて発展していく能力を意味します。
各分野で用いられる定義は多岐にわたりますが、困難を跳ね返す回復力や適応力という点で共通しています。
現代社会で注目される要因
現代社会では、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる不安定で予測困難な環境が常態化しつつあります。このような状況下では、変化に柔軟に対応し、困難を乗り越えていく力が求められます。
また、ストレス社会と言われる現代においてメンタルヘルスの重要性が高まっており、ストレスへの耐性やレジリエンスを高める必要性が認識されるようになりました。
こうした社会的要請を背景に、個人や組織のレジリエンスが注目を集めているのです。
レジリエンスが低いことによる個人・組織への影響

レジリエンスが低い状態が続くと、個人のメンタルヘルスや職場環境にさまざまな悪影響を及ぼします。ストレスや逆境に適切に対処できない場合、パフォーマンスの低下や人間関係の悪化につながり、個人と組織の両面でリスクが高まります。
ここでは、レジリエンスが低い状態が個人と組織にもたらす影響について詳しく解説していきます。
レジリエンスが低いことによる個人への影響
レジリエンスが低い個人は、ストレスや困難な状況に直面した際に適切に対処することが難しくなります。その結果、心身の疲労が蓄積し、燃え尽き症候群に陥るリスクが高まります。
また、ストレスによるモチベーションの低下は、仕事の質の低下や生産性の損失につながります。
さらに、問題への対処能力が低いと職場での人間関係にも悪影響を及ぼし、コミュニケーションの悪化や孤立感を招く可能性があります。これらの要因が重なることで、離職につながるケースも少なくありません。
レジリエンスが低いことによる組織への影響
レジリエンスが低い社員が増えると、組織全体のパフォーマンスにも大きな影響が出ます。個人のモチベーションや生産性の低下は、チームワークの崩壊や業務の停滞を引き起こします。
また、レジリエンスの低さから離職率が高まると、優秀な人材の流出や組織の不安定化につながります。
これらの問題は組織の業績や競争力に直結するため、経営層にとっても看過できない課題です。加えて、社員のメンタルヘルス不調は、医療費の増加や休職者の発生などコスト面でのリスクも伴います。
個人のレジリエンスを高める方法

レジリエンスは後天的に身につけることができる能力であり、適切なトレーニングを積むことで向上させることが可能です。
ここでは、個人のレジリエンスを高める心理学の知見を活用した実践的な方法を紹介します。
ストレスマネジメント力と自己効力感を高める
ストレスに適切に対処するためには、自分の心身の状態を客観的に認識し、コントロールする力が求められます。深呼吸やマインドフルネス瞑想などリラクゼーション技術を日常的に取り入れることで、ストレス耐性を高めることができます。
また、認知行動療法の考え方を応用し、ストレスの原因となる否定的な思考パターンを識別することで、より建設的な思考に切り替える訓練を行うことも有効です。
これらの技法を通じて、困難な状況でも冷静に対処できる自己効力感を高めていきましょう。
周囲との協力体制を築く
レジリエンスを高めるためには、一人で抱え込まずに周囲のサポートを上手に活用することが重要です。
家族や友人、同僚や上司といった身近な人々に自分の状況を伝え、理解と協力を求めることが第一歩となります。その際、自分の感情を適切に表現し、具体的な支援の内容を伝えることが効果的です。
また、職場におけるチームビルディングにも積極的に参加し、お互いの強みを理解し合える関係性を構築しましょう。信頼できる仲間からのサポートは、困難な状況を乗り越える原動力となります。
組織のレジリエンスを高める方法

組織のレジリエンスを高めるためには、個人の力だけでなく組織全体での取り組みが不可欠です。
ここでは、挑戦を支援する風土づくりと、人的資本への投資という2つの観点から、組織レベルでのレジリエンスを高める方法を解説します。
挑戦を支援する風土をつくる
レジリエンスの高い組織は、失敗を恐れずに新たな挑戦を奨励する文化を持っています。
イノベーションを生み出すためには、リスクを取ることが必要不可欠です。そのため、失敗を許容し、チャレンジを歓迎する企業文化を醸成することが重要です。
例えば、「失敗事例共有会」を定期的に開催し、失敗から学ぶ機会を設けるのも一つの方法です。
また、新規プロジェクトへの参加を積極的に評価する人事制度を導入することで、挑戦を後押しする環境を整えることができるでしょう。
人的資本へ投資する
組織のレジリエンスは、そこで働く一人ひとりの力に支えられています。したがって、人材育成や組織開発に積極的に投資することが、レジリエンス強化につながります。
具体的には、ストレスマネジメントやコミュニケーションスキルなどを学ぶ研修プログラムを導入したり、メンタルヘルスケア制度を整備したりすることが考えられます。
また、部署間の交流を促進するイベントを企画するなど、組織内のコミュニケーションを活性化する取り組みも効果的です。
これらの施策を通じて、社員一人ひとりがレジリエンスを高め、組織全体の回復力を向上させることができるでしょう。
▶レジリエンス研修とは?必要性や目的、実施するメリットや身につくスキルを解説
まとめ
本記事では、レジリエンスについて解説しました。
最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- レジリエンスとは困難な状況から立ち直る力のこと
- ラテン語の「跳ね返る」が語源となっている
- VUCA時代と呼ばれる不確実性の高い現代社会で注目されている
- レジリエンスが低いと個人はメンタルヘルスの悪化などの影響が出る
- 組織ではパフォーマンス低下や人材流出につながる可能性がある
個人のレジリエンスを高めるには、ストレスマネジメント力の向上や周囲との協力体制の構築が有効です。また、組織のレジリエンスを高めるには、挑戦を支援する風土づくりや人的資本への投資が重要となります。
レジリエンスは誰もが必要とするスキルであり、意識的に鍛えることで向上させることができます。是非、自分に合った方法でレジリエンスを高め、困難な状況でも折れない強い心を手に入れましょう。