SNSなどにより情報が拡散されやすくなったいま、企業におけるコンプライアンス遵守の重要性は高まる一方です。
法令や社会規範を遵守することを意味するコンプライアンス。本記事では、コンプライアンスの意義や必要性、企業が取り組むべき事項について解説します。
コンプライアンスを徹底することは、企業の社会的責任を全うし、リスクを回避するために不可欠です。管理職の方やコンプライアンスに関心のある方は、ぜひ一読ください。企業としての正しい姿勢とは何かを考えるきっかけになれば幸いです。
人事-研修担当者300名へのアンケート調査
コンプライアンスとは?
コンプライアンスとは、法令遵守の意味で用いられる言葉です。具体的には、法律や政令、条例などの法令だけでなく、社会規範や企業倫理も含め、社会的ルールを遵守することを意味します。
企業においては、法令遵守は最低限の条件として当然遵守しなければなりません。さらに、倫理的かつ社会的に望ましい活動を行うために、社会規範や企業倫理も重視する必要があります。この法令と倫理の両方を総称してコンプライアンスと呼んでいます。
コンプライアンスを実践するためには、法令遵守のみならず、高い企業倫理の構築が欠かせません。法的には問題ないが社会規範に反する行為は、破綻リスクを高めてしまいます。持続可能な企業活動を行うには、コンプライアンスの徹底が不可欠なのです。
企業におけるコンプライアンスについて
企業活動において、法令遵守は最低限の要件です。独占禁止法や消費者保護法など、事業に関連する法令を遵守しなければ、事業の継続自体が困難になります。
しかし、法令遵守だけでは不十分です。倫理的かつ社会的に望ましい企業行動を取るためには、社会規範や企業倫理の遵守が欠かせません。
例えば、法的には問題ないが、顧客を欺くような行為は倫理に反します。このように、法的範囲内であっても社会規範に沿っていない行為は、企業に対する信頼を失墜させます。持続的な企業価値向上のためには、法令遵守と企業倫理の両方を満たすコンプライアンスが経営の基盤となるのです。組織全体でコンプライアンスを徹底する企業文化の醸成が重要です。
ヒューマンアカデミーが人事・研修担当者にアンケート調査を行った結果でも、企業研修のテーマとして「コンプラ・ハラスメント研修」は上位となっています。それだけ、コンプライアンス遵守を重くみている企業が多いといえるでしょう。
【画像引用】https://biz.athuman.com/news/detail/132.php
コンプライアンス違反による不利益について
コンプライアンス違反は、企業に大きな不利益をもたらします。
まず法的な制裁が科される可能性があります。関連法令によっては、高額な罰金が課されたり、事業活動の一部停止を命じられることもあります。極めて重大な場合には、事業許可の取り消しもあり得ます。
次に、社会的信用の失墜です。コンプライアンス違反はマスメディアで大きく報道され、企業の評判を失墜させます。SNSの普及により、この影響はより大きくなっています。
さらに、投資家や取引先からの信頼を損ね、経営に悪影響を及ぼします。優秀な人材の採用も困難になるでしょう。コンプライアンス違反を未然に防止し、社会的責任を全うすることが重要です。
コンプライアンス違反が起きる原因
コンプライアンス違反が起きる原因として、3つの軸で考えることができます。
第一に、コンプライアンスに対する意識の欠如が挙げられます。法令遵守や企業倫理の重要性に対する認識が薄いため、問題行動が表面化してしまうケースです。コンプライアンスに基づいた行動の判断基準を明確にすることで、対策が可能です。
第二に、社内教育の不足が原因となることがあります。役員を含めた組織全体でのコンプライアンス教育が不十分だと、グレーゾーンの判断を誤るリスクが高まります。
このケースの場合、本人に罪の意識がなくコンプライアンスに反してしまっていることが多いため、しっかりと研修を行うことで予防していくことができるでしょう。
第三に、業務プロセスの不備も要因となり得ます。業務手順のチェック機能が弱いと、一部でのコンプライアンス違反が見過ごされてしまうことがあるためです。他にも、企業や部署で設定している目標が厳しく、かつ未達の場合に激しく叱責するような文化が蔓延していると、社員は𠮟責を恐れてコンプライアンスに違反する行動をしてでも自分の身を守ることがあります。
このケースの場合、企業文化や目標設定、売上KPIなどの根本から見直す必要があるため、改善には時間を要することでしょう。
これらの原因を踏まえ、組織全体のコンプライアンス意識向上と、業務プロセスの改善が欠かせません。
自社において、どのケースに当てはまる可能性が高いのかを整理し、コンプライアンス違反の芽は早期に摘み取る必要があります。
コンプライアンス違反を防止するためには
コンプライアンス違反を防止するためには、まず取り組むこととして、社内規程の整備が挙げられます。行動規範やコンプライアンスマニュアルを作成し、組織の方針を明確に示す必要があるでしょう。
そして、役員を含めた社員教育にも取り組むべきです。階層別・職種別に応じたプログラムを実施し、実効性のある理解を促します。同時に、コンプライアンスに関する相談窓口の設置です。コンプライアンスに関する疑問や相談を受け付ける窓口を作り、情報共有の場を提供することで、社内のリテラシーを高めつつ、トラブルが起きた場合の解決に働きかけることができます。その際には、コンプライアンス違反に関する内部通報制度の確立も欠かせません。コンプライアンス違反を早期に発見し、対策できる組織風土を作り上げるには、通報者の保護と秘密保持に配慮した制度設計がポイントとなります。
最後に、これらの取り組みを定期的に評価・改善していくPDCAサイクルを回すことが継続的な運用には欠かせません。
コンプライアンス違反防止の取り組みは組織全体で、継続的に行わなければ定着させることは難しいといえるでしょう。
コンプライアンス違反の事例
近年の大きなコンプライアンス違反としては、自動車メーカーによる排ガス検査の不正があります。排ガス規制を満たすようにするため、実際の運転状況とは異なる特別なテスト条件で排ガスを測定していたことが判明しました。
食品業界では、原材料の偽装表示が相次いで発覚しました。製造原価削減の意図があったとみられていますが、食の安全を脅かす行為で社会的影響は大きく、企業イメージの失墜につながります。
これらの事例から、コンプライアンス上の問題が表面化した場合、スピーディな対応が求められます。原因究明と再発防止、そしてステークホルダーへの丁寧な説明が重要となります。
コンプライアンス研修の有効活用を
企業におけるコンプライアンス意識の向上には、コンプライアンス研修の有効活用が欠かせません。
コンプライアンス研修では、単調な講義形式でなく、ケーススタディやディスカッションを取り入れて、理解を深めることが大切です。ケースメソッドやディスカッションを取り入れることで、社員一人ひとりの意識改革につなげることができます。
また、階層別や業務別にカスタマイズしたプログラムを用意する必要があります。単発のセミナーに終わらせず、継続的なフォローを行うことで、持続的なコンプライアンス体制の構築が可能となります。
コンプライアンス研修は、企業文化や価値観の変革を目的とした人材育成の一環と位置付けることが重要です。組織全体のコンプライアンス意識向上にコンプライアンス研修は有効に機能します。
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