効果的な企業研修を実現するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。例えば、以下のようなことが挙げられます。
・現場の本音を引き出し、研修ニーズを正確に把握すること
・組織戦略と連動した目標設定を行うこと
・現場ですぐに実践できる内容にすること
しかし、実際にこれらを実現するのは簡単ではありません。
「研修ニーズの把握が難しい」「研修内容が実務と結びつかない」「オンラインとオフラインのバランスが取れない」など、研修担当者の悩みは尽きないでしょう。
そこで本記事では、効果を最大化する企業研修のやり方や学びを定着させるフォローアップ術、研修手段の選び方を解説します。
人事-研修担当者300名へのアンケート調査
6つのステップで解説!効果を最大化する企業研修のやり方
効果的な企業研修を実現するためには、以下のような重要なポイントを押さえることが大切です。
- 現場の本音を引き出し研修ニーズを正確に把握する
- 組織戦略と連動した目標を設定する
- 現場で即実践できる研修内容にする
- 参加者の主体性を引き出す仕掛けを作る
- 階層に合わせた学習スタイルを取り入れる
- 学びを定着させる仕組みを作る
これらのポイントを踏まえ研修内容を現場の実態や参加者の特徴に合わせて最適化することで、学びの効果を最大化し組織全体の成長に貢献することができます。
1. 現場の本音を引き出し研修ニーズを正確に把握する
効果的な企業研修を実現するには、まず現場の声に真摯に耳を傾けることから始める必要があります。研修担当者が現場社員と直接対話することで、表面的なニーズだけでなく本質的な課題が見えてきます。
研修ニーズを正確に把握するため、以下の3つのステップで分析を進めることが重要です。
- 現場社員との1on1面談で、日常業務における具体的な課題や不安、改善要望を丁寧に聞き取る
- 部門横断的なアンケート調査を実施し、定量・定性データから優先度の高いニーズを抽出する
- 管理職と現場社員の認識ギャップを可視化し、双方の期待値を調整しながら研修テーマを決定する
上司の想定と現場の実態にズレが生じることがあります。例えば、管理職は「戦略的思考力の向上」を求める一方、現場では「基本的なコミュニケーションスキル」を必要としているケースがあります。
このような認識の違いを把握し現場の本音に基づいた研修設計を行うことで、参加者の主体性と学習意欲を高められます。
2. 組織戦略と連動した目標を設定する
研修効果を高めるには、組織全体の方向性と研修プログラムの目的を一致させることが重要です。経営層の描くビジョンや中期経営計画から、具体的な研修目標を導き出しましょう。
効果的な研修目標の設定には、以下の3つの要素を含めることが望ましいです。
- 全社の経営戦略や部門目標との関連付け
- 具体的な到達指標(KPI)の設定と評価基準の明確化
- 定期的な見直しと柔軟な目標調整の仕組み
研修で習得するスキルと実務での成果創出の関連性を明確にすることが重要です。例えば、営業部門であれば売上目標の達成に必要なスキルを特定し、それらを研修プログラムに組み込みます。
また、事業環境の変化に応じて柔軟に目標を見直せる体制も必要です。半年から1年単位での定期的な目標の見直しにより、常に最適な研修内容を維持できるでしょう。
研修担当者と現場責任者が密に連携し、目標の妥当性を継続的に検証することで、より実効性の高い人材育成が実現できます。
3. 現場で即実践できる研修内容にする
研修で得た知識やスキルを実践に活かせない状況では、せっかくの学びが机上の空論になってしまいます。研修内容を現場で即座に活用できる形に落とし込むことが重要です。
実務での活用を促進するため、以下の実践ツールと仕組みを研修に組み込むと良いでしょう。
- ケーススタディやロールプレイを通じた実践的な演習
- 業務で使えるチェックリストやテンプレートの作成
- 研修内容を日常業務に落とし込んだアクションプラン
- 定着度を確認できる振り返りシート
研修内容と実務をスムーズに接続することが大切です。研修で扱うケースを現場の実例を基に作成することで、参加者が研修内容を自分事として捉えられるようになるでしょう。
また、研修後の実践をサポートする体制も必要です。上司や同僚によるフォローアップ面談を設定したり、実践時の疑問点を気軽に質問できるコミュニケーションツールを用意したりすることで、学びを着実に定着させることができます。
4. 参加者の主体性を引き出す仕掛けを作る
研修の効果を高めるには、参加者が主体的に学びに関わる仕組みづくりが重要です。一方的な講義形式ではなく、参加者同士が積極的に関わり合える場を意図的に設計する必要があります。
参加者の主体性を引き出すには、グループワークの活用が効果的です。少人数のグループに分かれて課題に取り組むことで、参加者それぞれの経験や知見を共有できます。
異なる部署や役職の社員が交わることで、新たな気づきや学びが生まれやすくなるでしょう。
5. 階層に合わせた学習スタイルを取り入れる
企業研修では、新入社員・若手社員、中堅社員、管理職といった対象者の特徴に応じた効果的な研修手段を採用することが重要です。
対象 | 特徴 | 効果的なアプローチ |
新入社員・若手社員 | ・社会人経験が浅く、基本スキルが未熟。 ・柔軟性が高く吸収が早い。 | ・ロールプレイングやグループワークで実践的に学ぶ。 ・個別フィードバックで成長を促進。 |
中堅社員 | ・専門スキルがあるが自己流になりがち。 ・後輩指導や調整役を担う。 | ・ケーススタディやディスカッションを通じて実務で活用するスキルを習得。 ・自己評価シートで自己理解を深める。 |
管理職 | ・経営視点とリーダーシップが求められる。 ・組織成果を最大化する役割。 | ・経営シミュレーションやコーチング実践で意思決定力を向上。 ・講義形式とワークショップを組み合わせた学びを提供。 |
階層ごとに適した研修手段や研修内容を取り入れることで、受講者の成長を最大化し組織全体のパフォーマンス向上につなげることができるでしょう。
▶【階層別研修】若手・中堅・管理職に向けた研修実施のポイントやカリキュラム例
6. 学びを定着させる仕組みを作る
研修で得た知識やスキルを確実に業務に活かすには、学びを定着させる仕組みが重要です。研修後の実践機会とフィードバックを計画的に設定することで、学習効果を最大限に引き出せるでしょう。
効果的なフォローアップのコツはこの後詳しく解説します。
研修後の学習定着を図るフォローアップ術
研修後の学習定着を図るためには、以下のようなフォローアップ術が有効です。
- 具体的なアクションプランを作成する
- 定期的な振り返りを実施する
- 部門を超えたナレッジ共有を促進する
これらのフォローアップ施策を活用することで、学びの定着と成果の創出を促進できます。
特に、定期的な振り返りや部門横断でのナレッジ共有により、個人の成長だけでなく組織全体のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
具体的なアクションプランを作成する
研修の学びを実践に移すには、具体的な行動計画の策定が不可欠です。研修内容を業務に落とし込むための実践的なアクションプランを、以下の3つの観点から整理していきましょう。
計画項目 | 具体的な取り組み内容 |
短期アクション | 研修後1週間以内に実践する具体的なタスクの設定と上司との共有 |
中期目標 | 3ヶ月程度の期間で達成する具体的なマイルストーンの設定 |
長期展望 | 半年〜1年での到達目標と必要なリソースの明確化 |
アクションプランの作成では、目標を具体的な行動レベルまで落とし込むことが重要です。実践の場面で判断に迷わないよう、具体的な指標やチェックポイントを設定しましょう。
アクションプランを作成した後は、上司や同僚との定期的な進捗確認の機会を設けることで計画の実効性を高めることができます。
必要に応じて計画の見直しや軌道修正を行い、着実な成長を実現していきましょう。
定期的な振り返りを実施する
研修で学んだ内容を着実に定着させるには、振り返りの機会を設けることが重要です。研修内容の実践状況を定期的に確認し成功事例や課題を共有することで、学びを組織の財産として蓄積できます。
効果的な振り返りのポイントは以下の通りです。
実施タイミング | 具体的な取り組み内容 |
研修1ヶ月後 | 受講者全員でのフィードバックセッション開催 |
四半期ごと | 上司との1on1面談でスキル活用度確認 |
毎月1回 | 部門横断での成果報告会実施 |
振り返りの場では、具体的な成功体験や失敗から得た教訓を共有し、互いの気づきを学び合うことが大切です。
上司は部下の成長を支援する立場から、実践での悩みに寄り添いながら適切なアドバイスを提供することが求められます。定期的な振り返りを通じて、研修で得た学びを確実な成果へと結びつけていきましょう。
部門を超えたナレッジ共有を促進する
部門の壁を越えた知識共有は、研修効果を組織全体に波及させる重要な施策です。
研修で得られた知見を組織全体の財産として活用するため、以下のような取り組みが効果的です。
- 社内ナレッジプラットフォームの構築:部門ごとの成功事例や業務改善のノウハウをデータベース化し、全社員がアクセス可能な形で共有する。
- クロスファンクショナルな勉強会の定期開催:月1回程度、部門横断で事例共有や意見交換を行う場を設ける。
- ナレッジアンバサダー制度の導入:研修参加者が自部門での実践知を他部門に展開する役割を担当する。
特に、デジタルプラットフォームを活用したナレッジ共有は、時間や場所の制約を受けずに学習できる利点があります。各部門の優れた取り組みを全社で共有することで、組織全体の底上げにつながります。
部門を超えた学び合いの文化を醸成することで、研修効果の持続的な向上が期待できるでしょう。
企業研修の効果を高める研修手段の選び方
企業研修は、社員のスキルアップや組織力強化に欠かせない取り組みです。研修の目的や対象者に合わせて、適切な研修手段を選ぶことが重要となります。
OJTとOff-JT、社内研修と外部研修、オンライン研修とオフライン研修など、様々な選択肢の中から最適な方法を見極めることで、研修の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
ここでは、企業研修の効果を高めるための研修手段の選び方について解説します。
OJTとOff-JT
OJTは、実際の業務を通じて行う研修方式で、仕事に直結したスキルを身につけることができます。一方Off-JTは、業務から離れて行う研修で、体系的な知識の習得に適しています。
業務に必要な実践的なスキルを養う場合はOJTを、専門的な知識や理論的な理解を深める場合はOff-JTを選択するのが効果的でしょう。
また、OJTとOff-JTを組み合わせることで、相乗効果を期待することもできます。
社内研修と外部研修
社内研修は自社の業務に特化した内容で実施できるため、業界や企業独自の課題に対応しやすいというメリットがあります。一方外部研修は、他社の事例や最新のトレンドを学ぶことができ、視野を広げることができます。
自社の強みを活かしつつ外部の知見を取り入れることで、研修の効果を高めることができるでしょう。
また、社内研修と外部研修を組み合わせることで、バランスの取れた人材育成が可能となります。
▶外部研修とは?社内研修との違いやメリット・デメリット、効果を高めるポイントを解説
▶社内研修とは?メリット・デメリットや目的、種類、研修内容、実施手順について解説
オンライン研修とオフライン研修
近年、オンライン研修の需要が高まっています。オンライン研修は場所や時間の制約を受けずに学習できるため、効率的な研修が可能です。
一方オフライン研修は、対面でのコミュニケーションを通じてより深い理解や協調性を養うことができます。
研修の目的や内容に応じて、オンラインとオフラインを使い分けることが大切です。また、ハイブリッド型の研修を取り入れることで、それぞれの長所を活かした研修設計が可能となります。
▶オンライン研修|企業の人材育成を加速させるオンライン研修のポイントを解説
まとめ
本記事では、効果的な企業研修を実施するための6つのステップについて解説しました。 最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 現場の本音を引き出し、正確な研修ニーズを把握する
- 組織戦略と連動した具体的な目標を設定する
- 現場で即実践できる内容にする
- 参加者の主体性を引き出す仕掛けを作る
- 階層に合わせた学習スタイルを取り入れる
- 学びを定着させる仕組みを作る
研修後のフォローアップも重要です。具体的なアクションプランの作成、定期的な振り返り、部門を超えたナレッジ共有を促進しましょう。
また、OJTとOff-JT、社内研修と外部研修、オンライン研修とオフライン研修など、状況に合わせて最適な研修手段を選ぶことも効果を高めるポイントです。
これらの点を押さえて研修を実施することで、組織メンバーの成長を促し、ひいては組織全体のパフォーマンス向上につなげることができるでしょう。
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