企業における人材育成の中核を担う研修。しかし、以下のような悩みを抱えている人事担当者も多いのではないでしょうか。
・研修の目的や効果的な実施方法がわからない
・限られた予算の中で費用対効果を高めたい
・社員のモチベーション向上につなげる研修を行いたい
結論から言うと、研修は単なるスキルアップの場ではなく、人材マネジメントや経営戦略の重要な要素です。社員一人ひとりの成長を促し、組織全体のパフォーマンス向上につなげるためには、戦略的な研修施策が不可欠となります。
本記事では、企業研修の目的や種類、効果的な実施方法について詳しく解説します。予算の考え方やコスト対効果を高めるポイントにも触れていますので、ぜひご参考にしてください。
人事-研修担当者300名へのアンケート調査
企業における研修とは?
研修とは、企業において社員のスキルアップや能力向上を目的とした教育プログラムのことを指します。研修を通して、業務に必要な専門知識や技術を習得したり、マネジメント力やコミュニケーション能力などの汎用的なスキルを身につけることができます。
新入社員に対する基礎的な研修から、中堅・ベテラン社員を対象とした専門研修、経営層向けのリーダーシップ研修など、その内容や対象者は多岐にわたります。
企業において研修が重要な理由
企業研修は現代のビジネス環境において欠かせない要素となっています。急速に変化する市場や技術の進化に対応するためには、継続的な学習が必要不可欠です。研修を通じて従業員は最新の知識やスキルを習得し、変化に柔軟に対応できる力を養うことができます。
また、研修は社員のモチベーション向上にも大きく貢献します。自己成長の機会を提供することで、職場への満足度や帰属意識が高まるでしょう。さらに、計画的な人材育成は離職率の低下にもつながり、企業の安定的な成長を支える基盤となります。
優れた研修プログラムは企業の競争力強化に直結する重要な経営戦略です。
研修の本質的な目的

企業が研修を実施する本質的な目的は、社員一人ひとりの能力を高めることで、結果として組織全体の生産性や業績の向上につなげることにあります。適切な研修を行うことで、社員のモチベーションを維持・向上させ、定着率を高める効果も期待できるでしょう。
加えて、研修は社員の成長機会の提供にもなり、人材育成の観点からも重要な取り組みと言えます。
このように、研修は単なるスキルアップ施策ではなく、人材マネジメントや人事戦略の根幹を成すものであると言えます。経営層はその重要性を十分に認識し、戦略的に研修施策を立案・実行する必要があるといえるでしょう。
研修の手法

研修の手法は大きく分けて、OJT(On-the-Job Training)とOff-JTの2つに分類されます。OJTとは職場内で実際の業務を通して行う研修であり、実践を通した学習が可能です。
一方のOff-JTは、職場外の研修施設などで行う集合研修のことで、座学による知識の習得に適しています。近年ではオンライン研修の普及も目覚ましく、時間や場所の制約を受けずに受講できるメリットがあります。
OJT
OJTは、職場の上司や先輩社員が実際の業務を通して後輩社員を指導する研修手法です。職場環境に密着した実践的な訓練が可能であり、社員の主体性を引き出しながら必要な知識やスキルを身につけることができます。
しかし一方で、業務に追われる中で指導が行き届かないことや、指導内容に個人差が生じるなどの課題もあります。
Off-JT
Off-JTとは、会議室や研修施設などの職場外で行われる集合研修のことです。講義形式で体系的に知識を習得することができ、短期間で効率的な教育が可能です。
一方で、実践を伴わない座学に終始する傾向があり、知識の定着が不十分になりがちです。Off-JTの成否は、カリキュラムの内容や講師の力量によるところが大きくなります。
オンライン研修
近年注目を集めているのがオンライン研修です。受講者は時間や場所を選ばずにパソコンやスマートフォンから研修コンテンツにアクセスできるのが最大のメリットです。動画や双方向型のコンテンツも充実しており、交通費などのコストも削減できます。
一方で、実地の研修とは異なり、学習の集中力が持続しづらいなどの課題もあり、オンライン研修の適切な活用方法が重要となってきます。
効果的な研修を実施するための4つのステップ

企業研修を効果的に実施するためには、体系的なアプローチが欠かせません。やみくもに研修を行うだけでは十分な効果は得られないでしょう。
ここでは、研修の準備から評価までの一連のプロセスを4つのステップに分けてご紹介します。これらのステップを丁寧に踏むことで、社員の成長と組織の発展につながる価値ある研修を実現できるでしょう。
それぞれのフェーズで押さえるべきポイントを理解し、実践することが重要です。
研修ニーズの洗い出しと目的設定
効果的な研修を実施するには、組織や個人のニーズを正確に把握することが大切です。現状の課題や将来必要とされるスキルを特定し、具体的な研修目的を設定しましょう。社員へのアンケートや上司との面談を通じて、実際の業務における問題点や改善点を明らかにします。
また、市場動向や業界の変化も考慮に入れることが大切です。目標は「SMART」の原則に従い、具体的で測定可能かつ達成可能な内容にしましょう。
明確な目的があることで研修の方向性が定まり、効果的なプログラム設計が可能になります。
カリキュラム・手法の選定
ニーズと目的が明確になったら、それに適したカリキュラムと研修手法を選定します。研修内容は目的に沿ったものであり、参加者のレベルや特性に合わせて調整することが重要です。講義形式、グループワーク、ロールプレイング、オンライン学習など、多様な手法の中から最適なものを選びましょう。
また、実務に直結する事例やケーススタディを取り入れることで学習効果が高まります。研修時間や場所、必要な教材や機材についても綿密に計画することが求められます。
社内リソースで対応できない場合は、外部講師や研修会社の活用も検討しましょう。
研修の実施と運営
計画したカリキュラムに基づいて研修を実施します。この段階では、円滑な運営と参加者の積極的な関与を促すことが鍵となるでしょう。研修の冒頭で目的や期待される成果を明確に伝え、参加意欲を高めることが大切です。講師は専門知識だけでなく、受講者の理解度に合わせて柔軟に対応する能力も求められます。
また、質疑応答やディスカッションの時間を十分に確保し、双方向のコミュニケーションを促進しましょう。受講者の集中力を維持するために、適切な休憩時間の設定や内容の変化をつけることも効果的です。
研修中の様子や反応を記録しておくと、後の改善に役立ちます。
効果測定・フォローアップ
研修終了後は、その効果を適切に測定することが重要です。研修直後のアンケートだけでなく、一定期間経過後の行動変容や業績への影響も評価しましょう。定量的な指標と定性的な評価を組み合わせることで、多角的な効果測定が可能になります。
また、研修で学んだことを実務に活かせるよう、継続的なフォローアップも欠かせません。上司によるコーチングや定期的な振り返りの機会を設けることが効果的です。測定結果は次回の研修計画に反映させ、常に改善を図りましょう。
このPDCAサイクルにより、研修の質と効果は着実に向上していきます。
研修予算と費用対効果を高めるポイント
研修には様々な費用が発生し、その総額は企業規模や研修内容によって大きく異なります。しかし、高額な予算をかければ必ずしも効果的な研修になるとは限りません。重要なのは、投資に見合う成果を得られるかどうかです。
ここでは、研修にかかる主な費用の内訳と、費用対効果を最大化するためのポイントについて解説します。適切な予算配分と効果測定の工夫により、コストパフォーマンスの高い研修を実現しましょう。
企業研修にかかる主な費用
ヒューマンアカデミーが実施した人事・研修担当者300名のアンケート結果では、一人あたりの年間研修費用として10万円以上かける企業が約半数となりました。

※調査概要
調査方法:WEBアンケート
調査機関:2024年2月29日~3月4日の計5日間
対象地域:全国
調査対象者:⺠間企業に勤める⼈事・研修担当者
※メーカー・製造、サービス・インフラ、IT・ソフトウェア・情報処理など
回収件数:300名
【調査協力】株式会社マーケティング・コミュニケーションズ
企業研修の費用は、内容や形式、規模によって内訳や金額が大きく異なります。主な費用の内訳は以下の通りです。
- 研修企画・運営費
- 講師費
- 教材費
- 交通費
- 会場費
- 食事代
- 宿泊費
- 備品・その他
想定外の費用が発生しないよう、事前に費用を十分に確認しておくと安心です。
▶【2024年版】社員研修の費用相場とは?研修実施頻度と助成金の活用状況。人事・研修担当者300名のアンケート結果から考察
コスト対効果を高めるポイント
研修の費用対効果を高めるには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず明確な目標設定が不可欠です。達成したい具体的な成果を定め、それに直結する内容に絞り込むことで無駄を省けます。
また社内講師の育成も効果的な方法です。外部講師に依存せず、自社のノウハウを活かした研修体制を構築できます。
さらにオンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド型研修の採用も検討したいところ。基礎知識はオンラインで学び実践やディスカッションは対面で行うなど、効率的な設計が可能になります。
加えて、研修後の実務への応用を促す仕組みも重要です。学んだ内容を業務で活用する機会を意図的に作ることで、投資効果が高まるでしょう。
まとめ

本記事では、企業における研修の重要性と効果的な実施方法について解説しました。最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 研修とは、社員のスキルアップと能力向上を目的とした教育プログラムであり、変化する市場や技術に対応するために不可欠。
- 研修の目的は、個人の能力向上を通じた組織全体の生産性・業績向上であり、人材育成と人事戦略の根幹をなすもの。
- 研修手法には、OJT(On-the-Job Training)、Off-JT(職場外研修)、オンライン研修(eラーニング)などがある。
- 効果的な研修実施のステップとして、ニーズの洗い出しと目的設定、カリキュラム・手法の選定、研修の実施と運営、効果測定・フォローアップが重要。
- 研修予算と費用対効果を考慮し、目標設定や社内講師育成などを通じてコスト対効果を高めることが求められる。
企業における研修は人材マネジメントと経営戦略の中核であり、適切な計画と実行が組織全体の成長につながります。社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織の競争力を高めるために、効果的な研修プログラムの設計と実施に取り組んでいきましょう。
ヒューマンアカデミーでは、800以上の講座コンテンツや2,270名以上の在籍講師など、豊富なメニューによるカスタマイズ研修が可能です。企業研修にお困りの際は、お気軽にご相談ください。