近年、職場のメンタルヘルスの重要性が叫ばれていますが、メンタルヘルスについての理解を深めるための「メンタルヘルス研修」について有効性を深く理解している人は、まだ少ないのが現状です。
本記事では、メンタルヘルス研修の目的、必要性、効果的な実施方法を解説します。メンタルヘルス不調を未然に防ぎ、職場環境を改善したいと考えている方はぜひご覧ください。
人事-研修担当者300名へのアンケート調査
メンタルヘルス研修とは
メンタルヘルス研修とは、社員の心の健康に関する知識を習得し、メンタルヘルスの改善に役立てるための教育プログラムです。研修では、メンタルヘルスとは何か、その重要性、職場で生じる課題、対処の仕方といった内容を学びます。
具体的には、うつ病等の精神疾患の特徴や対応の仕方、職場環境改善のための方法、セルフケア術などを教えます。ロールプレイやグループワークを用いることで、参加型の研修形式を取るのが一般的です。
メンタルヘルス研修を通じて、職場全体のメンタルヘルスに対する理解が深まり、問題が生じた際の対処力が高まることが期待できます。健全な職場環境づくりに資する有益な研修といえます。
メンタルヘルス研修の目的
メンタルヘルス研修の主な目的は大きく分けて2つあります。
1つ目は、メンタルヘルスに関する正しい知識を習得することです。うつ病等の症状、発症の原因、対処法などについて学ぶことで、職場のメンタルヘルスリスクに対する理解が深まります。
2つ目は、職場環境の改善です。職場内のコミュニケーションの取り方や、ストレス要因の低減策を学ぶことで、メンタル不調を防止する職場づくりに役立てることができます。
このようにメンタルヘルス研修は、個人の意識向上とともに組織的な改善にもつながる効果が期待できます。健康経営の一環として、メンタルヘルス対策を強化するために有用な手段といえます。
また、メンタルヘルス研修の対象者は、階層を問わず全従業員に対して実施されるケースが多くなっています。ヒューマンアカデミーが人事・研修担当者300名に実施したアンケート調査では、「メンタルヘルス・レジリエンス研修」の実施率は、全階層において高い数値となりました。
▼アンケート調査より一部抜粋
階層別のメンタルヘルス・レジリエンス研修の実施率
- 新入社員:73%
- 若手社員:83%
- 中堅社員:79%
- 管理職:72%
従業員を取り巻くメンタルヘルスの悩みは企業でも重く見ているようで、企業研修をしっかり実施することで対策を取っている動きが見られる結果となりました。
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企業で起きるメンタルヘルスの問題
企業においては、過重労働や職場の人間関係などが原因で、うつ病や適応障害などのメンタルヘルスの問題が発生することがあります。近年、職場のメンタルヘルスの問題がクローズアップされることも珍しくありません。
具体的には、過重労働による精神疾患の発症や、職場の人間関係のストレスからくる急性ストレス障害などが社員の健康問題として顕在化しています。
背景には、業務量の増加に対応できないまま長時間労働が常態化していることや、上司や同僚からのパワーハラスメントなどの職場環境の問題があると考えられます。
これらのメンタルヘルスの課題は生産性の低下にもつながる重要な問題です。メンタル不調に陥った社員の役割を職場全体でカバーしなければならないことも少なくありません。
メンタルヘルス研修では、こうした職場の課題と対策を教えることで、問題の未然防止や早期発見に役立てることを目指しています。
メンタルヘルス研修で習得できるスキル
メンタルヘルス研修では、ストレスマネジメントや心の健康維持に関する様々なスキルを学ぶことができます。これらのスキルは、自身のメンタルヘルス向上だけでなく、周囲へのサポートにも役立つでしょう。
ここでは、メンタルヘルス研修で習得できる4つの重要なスキルを紹介します。
自己のストレスの認識・対処方法
メンタルヘルス研修では、自分自身のストレス状態を正しく認識し、適切に対処する方法を学びます。ストレスの原因を特定し、その影響を理解することで、効果的なストレス管理が可能になります。
また、リラクゼーション技法やタイムマネジメントなど、ストレス対処に役立つ具体的なスキルを身につけることができるでしょう。
自己のストレスと上手に付き合うことは、メンタルヘルスを維持する上で非常に重要です。
周囲のメンタルヘルス不調に気が付く方法
メンタルヘルス研修では、言動の変化や身体的な症状など、メンタルヘルスの問題を示すサインを見逃さないよう、注意深く観察する方法を学びます。また、適切なコミュニケーションを通じて相手の心情を理解し、サポートにつなげる方法も習得できます。
周囲のメンタルヘルスに気を配り、適切に対処出来るようになることで、職場全体の幸福度向上が期待できるでしょう。
ストレスを軽減する職場環境の作り方
メンタルヘルス研修では、ストレスを軽減する職場環境を作るための知識とスキルを学びます。業務の適正な割り振りや柔軟な働き方の導入など、組織的なストレス対策の方法を理解することができるでしょう。
また、円滑なコミュニケーションやチームワークを促進するためのスキルも身につけられます。ストレスの少ない職場環境を作ることは、従業員のメンタルヘルス向上と生産性アップに直結します。
メンタルヘルスの保ち方・向上方法
メンタルヘルス研修では、日常生活の中でメンタルヘルスを保ち、向上させるための方法を学びます。適度な運動、十分な睡眠、バランスの取れた食事など、心身の健康を維持するためのセルフケア方法を理解することができるでしょう。
また、ストレス解消に役立つ趣味や余暇活動の重要性についても学べます。メンタルヘルスを向上させるためのスキルを身につけることで、充実した職場生活と私生活を送ることができます。
メンタルヘルス研修を実施するメリット
近年、職場におけるメンタルヘルスの重要性が広く認識されるようになりました。従業員のメンタルヘルスを守ることは、企業の生産性向上や人材の定着にもつながります。
ここでは、メンタルヘルス研修を実施することで得られる4つの主なメリットを解説します。
メンタルヘルスの不調に気が付きやすくなる
メンタルヘルス研修を受けることで、自分自身や周囲の人々のメンタルヘルス不調に気づきやすくなります。ストレスサインを見逃さず、早期発見・早期対応につなげることができるでしょう。
また、メンタルヘルスに関する正しい知識を持つことで、不調者に対する適切なサポートが可能になります。メンタルヘルス不調の予防と早期対応は、職場全体の幸福度向上に不可欠です。
生産性・モチベーションが向上する
メンタルヘルス研修を通じて、従業員がストレスマネジメントスキルを身につけることで、生産性とモチベーションの向上が期待できます。ストレスを適切にコントロールできる従業員は集中力が高く、創造性を発揮しやすいでしょう。
また、メンタルヘルスの良好な職場環境では、従業員の仕事に対する意欲も高まります。生産性とモチベーションが向上することで、企業の業績アップも期待できます。
休職率・離職率が低下する
メンタルヘルス研修の実施により、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことができます。その結果、メンタルヘルス不調による休職や離職のリスクが低下するでしょう。
休職率・離職率の低下は、企業にとって大きなコスト削減効果をもたらします。また、優秀な人材の定着にもつながるため、企業の長期的な発展に寄与するでしょう。
復職者へ適切な支援が出来るようになる
メンタルヘルス不調で休職した従業員が復職する際には、適切なサポートが必要です。メンタルヘルス研修を受けた上司や同僚は、復職者の状況を理解し、必要な配慮を行うことができるでしょう。
また、復職者本人もストレスマネジメントスキルを活かして、再発防止に努めることができます。復職者への適切な支援は、スムーズな職場復帰と再休職の防止に役立ちます。
メンタルヘルス研修実施のポイント
メンタルヘルス研修の効果を高め、社内でメンタルヘルスに対する理解と実践を広めるためのポイントを解説します。
①メンタルヘルス研修を能動的なカリキュラムで実施する
研修では、ロールプレイやグループワークなど参加型の手法を取り入れることで、参加者の理解を深め、高い意欲に繋げることができます。一方的な講義形式ではなく、受講者が主体的に考える工夫を施しましょう。
②フォローアップ研修を実施する
2つ目は、単発の研修に終わらせないことです。メンタルヘルス研修を一度開催しても、時間が経つと、どうしても理解と意識が薄れていってしまいます。定期的なフォローアップセミナーを開催するなどして、継続的な研修体系を構築することが重要です。
③研修の効果測定を実施する
研修の効果測定を行い、次回に向けて内容のブラッシュアップを図ることも大切です。研修前後での意識変化を調査し、プログラムを改善するPDCAサイクルを回すことが重要です。
これらを意識して研修を実施することで、職場のメンタルヘルス向上に効果的につなげることができるでしょう。
管理職と一般社員で異なるカリキュラム策定が重要
メンタルヘルス研修では、管理職と一般社員で異なる立場に合わせたカリキュラムを設定することが重要です。一般社員には、自身のストレスへの対処法やセルフケアの方法を中心に研修します。
一方、管理職には部下のメンタルヘルス不調に気づく力や、適切に対応する力が求められます。そのため、管理職研修では部下のサインの見極め方や具体的な対応の仕方に重点を置きます。管理職には一般社員以上に高度なメンタルヘルスに関する知識が必要となります。一般社員と同じ研修内容では管理職としての資質向上につながりません。
職責と立場に応じたカリキュラムを用意することで、全社的なメンタルヘルス対策力の向上を図ることができるでしょう。
メンタルヘルス研修のカリキュラム例
メンタルヘルスの基礎知識、職場環境の改善策、セルフケアの方法などを網羅的に学ぶ基礎プログラムがあります。さらに管理職向けには、部下対応力強化のためのカリキュラムを別途用意することもできます。
ヒューマンアカデミーでは、企業のニーズや目的に合わせて最適な内容のメンタルヘルス研修を提供しています。
メンタルタフネス研修
- 「失敗したらどうしよう・・・と考えてしまって、なかなか行動に移せない」
- 「何度も練習を繰り返しているのに、本番になると力が発揮できない」
- 「どうやったら自信がつくのか分からない・・・」
多くの方が「分かっているけど、できない」という理由で悩んでいるのではないでしょうか。解決するには、心のしくみを理解し、効果的な方法で取り組むことが重要です。
本研修では、具体的な方法を体系化し、再現できるようにしたものを体験を通してお伝えしていきます。
メンタルタフネス研修の目的
- 逆境に打たれ強いマインドを構築する
- 自信をつけて、ストレス対応力を高める
メンタルタフネス研修に期待される効果
- 逆境から逃げず、立ち向かうことのできるマインドを構築することができる
- 落ち込み3秒で、次の行動に移すことができるようになる
- 日々のストレスを適宜発散し、周りにもよい影響を与えることができるようになる
- ストレスで落ち込んでいる方に対して、体系的な助言をすることができるようになる
メンタルタフネス研修のカリキュラム例
企業のメンタルヘルスに関連する研修
その他にも、企業のメンタルヘルスを改善するために役立つ研修カリキュラムをご用意しています。特に管理職においては、メンタルタフネス研修と合わせて実施することで、より効果を高めることができるでしょう。
ストレスマネジメント研修
ストレスによる心身疾患で休職者が相次ぐ昨今、“心の健康”は個人で解決すべき問題ではなくなり、組織全体で取り組むことが求められています。
そこで、ストレスに対する大切な考え方だけではなく、職場で取り組むべき具体策を指導することで、問題が発生することを未然に防ぎます。また、ストレスと上手に付き合うコツを習得します。
生産性の向上のために、予防を浸透させることは、組織にとって必要不可欠なのです。
ストレスマネジメント研修の目的
- 落ち込んでもすぐに立ち直れる方法を学ぶ
- ストレスで悩んでいる職場の仲間の助けになる方法を学ぶ
ストレスマネジメント研修に期待される効果
- 難しい仕事に進んで取り組めるようになる
- 苦手意識を持っていた人との関わりが楽しくなる
- 落ち込んでも、元の状態に戻る方法を体得できる
- 周囲がストレスで落ち込んだとしても、対応できるようになる
ストレスマネジメント研修のカリキュラム例
アンガーマネジメント研修
アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで始まったイライラ、怒りの感情と上手に付き合うための心理的なスキルのことです。ビジネスパーソンをはじめ、医師や政治家、スポーツ選手等々様々な方がアンガーマネジメントを実践しています。
「怒り」の感情をコントロールできないと周囲の人と衝突したり、判断力を失い仕事が非効率になる、職場関係が悪くなる(パワハラにも発展する可能性)、ストレスが溜まって病気になりやすい、などなど、悪影響を及ぼします。
人間ですので、怒りという感情はあって当然のこと。怒りという感情を出さなくするのではなく、それをコントロールできるようになることが目的なのです。
メンタルヘルス研修にお困りですか?
メンタルヘルス研修は、職場のコミュニケーション改善に資する効果的な手段です。単なる知識付与ではなく、職場環境の改善につなげることが大切です。
研修担当者には、対象者のニーズに合わせたカリキュラム策定が求められます。また、単発の研修に終始することなく、継続的なプログラムを構築する必要があります。
メンタルヘルス研修の実施でお困りでしたら、企業研修に実績あるヒューマンアカデミーまでお問い合わせください。研修カリキュラムの相談から講師アサイン、計画策定など研修を幅広くサポートいたします。